社宅代行の投資効果(ROI)、コスト以上の価値はどう示される?
単なる「外注」ではない効能を数字で可視化
社宅制度は、社員の安心や定着率を支える重要な仕組みのひとつです。しかし、管理業務は煩雑で、物件探し・契約・家賃処理・トラブル対応など、多大な工数を要します。そのため、近年では「社宅代行サービス」を導入する企業が増えています。
一方で、経営層からはしばしば、「コストをかけてまで代行依頼をする必要があるのか?」という問いが投げかけられます。そこで注目されるのが、ROI(投資対効果)です。本記事では、社宅代行がもたらす効能を「コスト削減」「採用力強化」「リスク低減」の観点から数値化し、単なる外注ではない価値を整理していきます。
ROI視点①:業務コスト削減効果
人事・総務担当者の工数削減
社宅管理では、1件あたり以下の業務が発生します。
• 物件検索・不動産会社との交渉(平均2〜3時間)
• 契約手続き(平均2時間)
• 入退去立ち会い・原状回復調整(平均3時間)
• 家賃支払い・給与天引き処理(毎月30分=年間6時間相当)
仮に100件の社宅を管理している企業であれば、年間延べ400〜500時間の工数が必要になると推察できます。ただし、代行を活用すれば、担当者の工数は最大70〜80%削減でき、人件費換算で数百万円規模のコスト削減が可能と考えられます。

契約条件の最適化によるコスト圧縮
代行業者は不動産会社とのネットワークを持ち、複数社宅の一括交渉を行うことで、家賃相場より平均5〜10%低い条件で契約できるケースもあります。100戸規模で考えると、年間数百万円のコスト削減につながることも珍しくありません。
ROI視点②:採用力・定着率の向上
住宅支援が採用力を強化する国内データ
マイナビ2026年卒学生調査によると、企業選びで重視する福利厚生として「住宅手当・家賃補助制度」は53.6%で2位にランクインしました。(参考:就職先に求める福利厚生制度 / 2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識)また、若手社員の満足度も37.4%と最も高く、10年以上のベテラン社員にとっても21.3%と重視しているという結果も出ています。(参考:2025年の福利厚生制度ランキング!社員が選んだ人気の制度を発表!)
こうしたデータからも、住宅支援は採用広報や内定承諾、入社後の定着に大きな影響を持つことが分かります。
離職率低減=コスト削減効果
社員1人が早期離職した場合、採用・教育コストとして100〜200万円程度の損失が発生すると言われています。社宅制度による生活基盤の安定は、この離職リスクを下げる役割を果たします。結果的に、「採用コスト削減」という形でROIに寄与します。
ROI視点③:リスクマネジメントの強化
トラブル対応リスクの外部化
社宅における代表的なリスクとしては、以下のような事項が考えられます。
• 契約、更新、解約の管理
• 近隣住民とのトラブル
• 外国籍社員対応(多言語、保証会社連携)
• 原状回復費用をめぐるトラブル
• 精算、税務処理の専門サポート
これらのトラブルが発生すると、人事・総務担当者が膨大な時間を割かれるだけでなく、法務リスクにも発展しかねません。代行サービスでは、こうした交渉や調整を経験豊富なプロが一括対応するため、企業側のリスクは大幅に軽減されます。

法改正や制度変更への対応
住宅関連制度や税制改正(例:住宅手当の課税扱い)への対応も代行業者がカバーできるため、最新法令順守(コンプライアンス)の観点でもROI効果があります。
まとめ:社宅代行は「コスト」ではなく「戦略投資」
社宅代行は、単なるアウトソーシングではありません。
- 業務効率化による人件費削減
- 採用力・定着率アップによる人材コスト削減
- トラブル・法務リスクの低減
これらを総合すれば、社宅代行は導入コストを大きく上回る『ROIを創出できる“戦略投資”』といえるでしょう。
導入する際の判断軸は、「削減額」「防止できる損失」「採用力の向上」という定量的な数字が重要になります。単に「便利になる」というだけではなく、数字で効果を可視化することにより、社宅代行の導入は「コスト増」ではなく「未来を見据えた投資」となるのです。